―― Vol.9 SUD Restaurant TERAKOYA ――

 コロナ禍において飲食店のあり方が問われている。「飲食店とは何か」「飲食店とは何のための存在なのか」―――――――――
『SUD Restaurant TERAKOYA』の間光男オーナーシェフは明確な答えを持っていた。



■ゴージャスなエントランスに胸が高鳴る。

 昨年8月にオープンした『SUD Restaurant TERAKOYA』。店名にもある『TERAKOYA』は、東京・小金井市で創業60年超を数える老舗のフレンチ・レストランであり、こちらは4店舗目にあたる。商業施設アトレ竹芝の2階に位置する同店に足を踏み入れると、まずは格調高い内装とテラス席からの絶景に圧倒される。


■メインダイニング。



■テラス席からは浜離宮と東京湾が一望できる。



まさに非日常の世界。空間づくりに徹底してこだわり抜いているのがわかる。そしてこの日いただいたランチも、好奇心をそそられる器や、意趣を凝らした美しい盛り付けなど、目にも楽しい料理の数々が並ぶ。店内の空間作り同様、料理の演出にも徹底したこだわりを感じる。




さっそく、オーナーシェフの間光男氏にお話を伺った。

レストランとは非日常を楽しむ空間

「私はレストランというのは、日常を離れた、非日常を楽しむ空間だと考えています」

"もちろん普段づかいの飲食店も素晴らしい。そこは役割分担"と言い置いて間シェフは続ける。


■TERAKOYA三代目オーナーシェフの間光男氏


「そして普段とは違う気分で召し上がっていただくために大切なのが雰囲気。たとえばおにぎり1つとっても、富士山の山頂で食べると美味しいじゃないですか。環境や雰囲気というのは味さえも変える。そういう力を持っていると思います」

「つまりレストランというのは、究極で言えば料理だけを売っているのではない。時間を売っているんです。その時間の中には、目に見える景色であったり、調度品の美しさや、手に持つとしっくりくるカトラリー、きちっと訓練された微笑をたたえたサービスも含まれる。それらすべての価値をお客様に楽しんでいただく。私はこれがホスピタリティだと思っています」

『SUD Restaurant TERAKOYA』が料理はもちろん、空間づくりにも徹底してこだわるのには、こんな間シェフの想いが込められていた。


生産者を支援する"三方良しプラン"

『SUD Restaurant TERAKOYA』のオープンに先立つこと昨年の5月。間シェフは全店舗のディナーで 三方良しプラン"をスタートさせる。これはコロナ禍において行き場を失った市場の高級食材をTERAKOYAが受け入れ、それをリーズナブルな価格でお客様に提供するというもので、「食材の生産者の皆さんを支援したい」という間シェフの思いが込められたものだ。


■三方良しプランはTERAKORAのオンラインショップでも購入できる(2021年6月現在)


「昨年は、史上最大の需要があると言われたオリンピックに向けて、生産者の方たちが何年も前から生産計画をたてて食材を育てあげてきていました。そしてさあいよいよ出荷だ、というタイミングでコロナになり、膨大な量の食材が行き場を失ったんです」

「誰かがその食材を使わないと、当然生産者は立ち行かないし、いずれは廃業するしかなくなります。それは何としても避けたいということで、この "三方良しプラン"を考えたんです」

しかし、コロナ禍という苦境のなか、高級食材をリーズナブルな価格で提供してまで生産者を支援しようとしたのはなぜなのか。

「商売をするうえで"自分達さえ良ければいい"という気持ちではダメです。私はつねづね、社会に生かされての初めての飲食店だと思っています。私たちが営業することで、生産者や、地域の人々に喜んでいただける。そういう社会的な目線が重要なんです



“飲食店とは社会のインフラである”

間シェフの言葉の端々には、「飲食店とは社会のインフラである」という思いが表れているように感じる。

「人間が人間らしい生活を送るためには、美味しいものを食べたり、人生の節々でお食事を伴って過ごす楽しいひとときが重要であり、必要なことだと私は考えています。これは電気やガスがそうであるように、人間が人間らしく生きるために欠くべからざるもの。そう考えると、その機会や場所を提供できる飲食店は、社会のインフラと言って良いと思っています」

「特に本店のTERAKOYAは小金井で60年以上営業を続けています。地域の人々との結びつきも強い。例えば結納をTERAKOYAでやられたお客様が、その数十年後に成長したお子様の結納もTERAKOYAでやられたりします。または喜寿のお祝いをTERAKOYAでやられて、さらに米寿のお祝いもTERAKOYAでやられるなど、ご家族の節目節目で使っていただくことが多い


■TERAKOYA建築時の写真(当時はアトリエだった)。 



■現在のTERAKOYA。小金井で60年以上の歴史を持つ。


「私達TERAKOYAも、存続し、場所を提供することで社会に対するある種の責任を果たし、かつお客様から御料理代を頂戴して私たちも生かされている。まさに共存共栄。私たちはそういう見えない結びつきを社会と持っている。これはまさにインフラと言えると思います



いびつなスペースの中でベストなレイアウトを模索した厨房

それではいよいよ厨房にお邪魔させていただく。まず気が付くのは厨房全体のレイアウトがところどころ"斜め"な点だ。


■SUD Restaurantの厨房。

間シェフは言う。

「厨房のレイアウトには苦労しました。建物自体が難しい形をしているので、厨房も壁が斜めだったり、中央に柱があったりします。今のレイアウトはこの条件の中でようやく実現できたベストなレイアウトだと思います」


■壁に合わせて厨房のラインを斜めに配置。導線を確保している。



基本性能に満足。使い慣れたベーカリーオーブン

自家製パンの焼成には当社製のベーカリーコンベクションオーブンを使用していただいている。ちなみに間シェフは本店のTERAKOYAのパティスリー棟でも当社製のオーブンをお使いいただいており、「使い慣れていますし、基本性能がしっかりしている」とのことでSUD Restaurantでも導入いただいた。

スチコンは多彩な用途に使用

続いて厨房の中央に位置するスチコンについて伺った。

スチコンの用途は色々です。100℃で蒸すこともあれば、中温で火を通すこともありますし、真空調理の加熱にも使っています。芯温センサーはローストビーフの調理に使用しますし、メニュー機能も重宝してます」

多彩な用途に使うとともに、メニュー機能による省力化も図っているとのことである。



客席からも見えるグリドル。サラマンダーは食材の調理にも使用

また、グリドル(フライトップレンジ)やサラマンダーはメインダイニングに面した窓の近くに設置している。

「サラマンダーはもちろん焦げ目つけにも使用しますが、ヤリイカなどを軽く炙って半生の状態で提供するのにも使っています。グリドルはもちろんグリル調理に使用しています」

見た目に臨場感のあるグリル調理は見ていても楽しいもの。お客様に楽しんで欲しいという間シェフの思いが感じられる。



ポスト・コロナへの想い

最後に間シェフにポスト・コロナに向ける想いを聞いた。

「私は歴史が好きなので、日本史、世界史ともに諳んじていることが多いのですが、歴史を学ぶにつけて思うのは、人間の営みというのは本当に力強い、タフなものだということです。戦後の焼け野原からの復興しかり、震災からの復興しかり。ですから、今はコロナ禍において苦戦している飲食業も、必ず復活すると信じています」

「そしてその復活する条件として、"社会の中で生かされている"という視点を持っているかどうか。社会のインフラ"としての責任を全うしようという思いがあるかどうかが重要になってくると思います。ポスト・コロナの世界では、それが本当の意味でのブランド価値になるかもしれません」

社会とのつながりを意識し、インフラとしての責任をまっとうする。これこそが、間シェフの経営理念である。



間光男オーナーシェフPROFILE

レストランTERAKOYAに生まれる。
幼少より祖父である初代、間載一から食の英才教育を受け、料理の道をめざす。
料理専門学校卒業後、TERAKOYAにて修行を開始する。のちに3代目オーナーシェフを継ぐ。
独自の料理理論を持ち、創作数は3,000を超える。
メディアに多く取り上げられ、料理対決番組などに出演。
海外トップシェフとのコラボレーションや専門誌に執筆多数。
国内外で開催される料理学会に日本代表として招聘されるなど、幅広く活躍。


―― SHOP INFO ――

SUD Restaurant TERAKOYA


〒105-0022
東京都港区海岸1-10-30 atre竹芝 タワー棟2F
Tel. 03-5422-1073

営業時間  Lunch  11:00~15:00
Cafe  14:00~17:00
Dinner  17:00~23:00
定休日  アトレ竹芝の休館日に準ずる。
※現在、東京都の時間短縮要請により営業時間を変更しております。詳しくは下記公式HPのNewsをご覧ください。
公式HPはこちら→https://sud-terakoya.jp/

TERAKOYA(本店)


〒184-0013 東京都小金井市前原町3-33-32
Tel. 042-381-1101

営業時間  Lunch  12:00~15:00
Dinner  18:00~23:00
定休日  月曜日、第1火曜日
※現在、東京都の時間短縮要請により営業時間を変更しております。詳しくは下記公式HPのNewsをご覧ください。
公式HPはこちら→http://www.res-terakoya.co.jp/
「三方良しプラン」の購入等、オンラインショップは
こちら→https://boutique.res-terakoya.co.jp/

ブラッスリー エディブル(東京都武蔵野市)



公式HPはこちら→https://www.brasserie-edible.com/

ブラッスリー アミカル(東京都立川市)



公式HPはこちら→https://www.brasserie-amicale.com/