―― Vol.7 トラットリア・ダ・ケンゾー ――
横浜の人気イタリアン『ラ・テンダロッサ』にて17年間料理長を務め、同店を横浜随一の人気店に育て上げた西沢健三シェフ。その西沢シェフが満を持して独立開業に舵を切ったのは2020年4月のこと。地元横浜はもちろん、イタリア料理界関係者からも大いに注目を集めながら開業したのが『トラットリア・ダ・ケンゾー』である。
■平安堂新社屋の3階に位置する『トラットリア・ダ・ケンゾー』。
2021年3月下旬。段々と春めいてきた穏やかな陽気の中、横浜・馬車道通りを歩くと昨年新築された平安堂薬局の新社屋が姿を現す。『トラットリア・ダ・ケンゾー』が位置する3階に足を運ぶと、まず目に飛び込んでくるのがエントランスから直結する広々としたテラス席。馬車道通りが一望できる。
そして店内に入ると、ゆったりとした空間にカウンター席、テーブル席が並んでおり、壁一面の大きな窓は開放感が心地良い。
開業時の想い。"横浜で一番流行るお店にする!"
「実は当初はもう少し小さな店舗での開業を予定していたんです」
そう話すのは『トラットリア・ダ・ケンゾー』の西沢健三オーナーシェフ。
■西沢健三オーナーシェフ
「ここよりも小さめな物件が近くにありまして、席数としては35~37席くらいの規模を想定していました」
しかし、『トラットリア・ダ・ケンゾー』の席数は60を超える。ほぼ倍の大きさの物件に変更したのはどうしてなのか。
「当初の物件は天井の低さがネックで決心がつきかねていたんですが、そんなときにここ平安堂さんの物件の話が来たんです。実際に見てみると僕の開業プランよりもかなり大きい物件でしたが、天井が高く開放感があり、何より広々としたテラスが決め手になった。同行してくれた友人も"絶対にこっちの方が良い"と太鼓判を押してくれたんです。大家さんも地域密着型の経営をされている方で、"これからも横浜で頑張ってくれる人に入って欲しい"ということで、僕との契約を快諾してくださいました」
まさに物件との出会いは縁。西沢シェフは大家さんに「横浜で一番流行るお店にします」と約束したとのこと。
コミュニケーションを重視。イタリア流のおもてなし
『トラットリア・ダ・ケンゾー』を語る上で欠かせないのが、スタッフによるお客様とのコミュニケーション。ランチでお邪魔したこの日も、ホールスタッフがお客様に積極的にお声がけし、西沢シェフも時折り厨房から出てきては店内のお客様と会話をしたりと、細やかなコミュニケーションをとっている。
「やっぱりそれがイタリアだと思うんです」
きっぱりと西沢シェフは言う。
「僕は5年弱イタリアで修業していましたが、イタリア人は総じてコミュニケーション能力が高いんです。スキンシップも非常に多い。そして相手を尊重・尊敬するっていう気持ちが強いんですね。僕は"ここは日本だけど『トラットリア・ダ・ケンゾー』の中はイタリア"というのをテーマにしているので、お客様とのコミュニケーションは必然なんです。やはりそれがイタリアンですから」
西沢シェフが目指しているのは"本場フィレンツェのトラットリア"だという。料理だけではなく、おもてなしにもイタリアを感じて欲しいというシェフの想いが込められている。
料理は季節感を重視。ワインは品揃えに自信。
料理に関するこだわりについて伺うと 「季節感を重視しています」と西沢シェフ。
「レストランの料理は季節感が一番大事なんです。僕も"季節のお野菜とお肉料理を楽しんでいただく"というのをテーマにしているんですが、最近はお客様の健康志向もあってシーフードにも力を入れています。やはり天然物の魚介類は昨今の健康志向にもマッチしますし、何より季節感を感じていただくのに最適ですから」
西沢シェフは毎朝、横浜中央市場に天然物の魚介類の仕入れに出向いているという。シェフのお言葉通り、この日ランチでいただいた魚介サラダは新鮮なホタルイカが絶品。パスタも濃厚なイカスミソースが美味しかった。
さらに西沢シェフはワインの品揃えにも自信を覗かせる。
「ワインは常時500~600本置いていますし、ソムリエも3人います。横浜でソムリエが3人もいる街場のイタリアンは恐らく『トラットリア・ダ・ケンゾー』だけですね」
季節感溢れる料理に、豊富なワインの品揃えからお気に入りの1本を合わせる・・・。『トラットリア・ダ・ケンゾー』を訪れる人には、そんな幸せな時間が待っている。
本場イタリアのレイアウトをそのままに。作業性に優れた厨房。
それではいよいよ厨房にお邪魔させていただく。まず目に飛び込んでくるのはアイランド型に向かい合った当社製のガスレンジとガステーブルだ。
■手前がガスレンジ、奥がガステーブル。
西沢シェフが説明してくださった。
「イタリアンの一般的なメニュー構成は ①アンティパスト (前菜)、②プリモピアット (パスタなど)、③セコンドピアット (肉料理など)、④ドルチェ(デザート)の4つに分かれるんですが、重要なのが火の元を使用する②プリモピアットと③セコンドピアット。この2つのセクションを向かい合わせにレイアウトしています」
■鍋の受け渡しがしやすいよう、バックガードを無くした仕様。
合計10口のコンロを向かい合わせてアイランド型にすることにより、鍋の受け渡しがしやすくなり効率よい作業が可能になるという。西沢シェフいわく、「この2つのピアットを向かい合わせるのはイタリアでは一般的なスタイル」とのこと。
「もう戻れない」。初導入したスチコンは機能の高さに納得。
向かい合った2つのピアットの奥には当社製のスチームコンベクションオーブンが位置する。西沢シェフは『トラットリア・ダ・ケンゾー』を開業する際に初めてスチコンを導入したと言う。
「マルゼンの担当さんから"スチコンは絶対に入れた方が良い"という強力な推薦があったので今回導入したんですが、いざ使ってみると”こういうことか!”と納得しました。作業効率が上がるだけでこんなにもストレスが減るんだと。本当に助かりました」
具体的にはどういった用途に使っているのだろうか。
「プリンをコンビネーションモードで焼成しているのですが、あれは本当に素晴らしい。焼き上がりも良いし仕上がりも早い。以前は水を張って湯煎焼きしていたのですが、スチコンを導入してからはその手間もなくなりました」
「毎朝トスカーナパンとフォカッチャを粉ベースで7kg焼いているんですが、スチコンで焼成することでムラ無く仕上がりますし、乾燥させたいときもダンパーの開け閉めで自由自在に対応できるので助かっています」
「他にもローストビーフを焼いたり、ピラフの調理に使ったりと、ありとあらゆることにスチコンを使っています。」
総じて"もうスチコン導入前には戻れない"と西沢シェフ。スチコンが同店の作業効率向上に大いに貢献しているようだ。
店名に込めたこだわり。「お客様にはとにかく楽しんで、笑顔になって欲しい」
「これはどうして店名を"リストランテ"じゃなくて"トラットリア"にしたのかっていうことでもあるんですけど」
言い置いて西沢シェフは続ける。
「"トラットリア"は家庭料理屋という意味でもあるので、『ラ・テンダロッサ』時代とは違う、カジュアルな雰囲気で気軽に楽しんで欲しいという気持ちがあるんです。"ネオ・トラットリア"というか、カジュアルなんだけど、本物のイタリア料理を出す実質本位なお店というイメージです。お客様には気軽に楽しんで欲しい。気軽に楽しんで、たくさん料理を食べて、ワインも飲んで、そして笑顔で帰って欲しい。それが僕の一番のテーマです」
すべてはお客様の笑顔のために。本場イタリア仕込みの料理とおもてなしには、シェフの想いが込められている。
西沢健三オーナーシェフPROFILE
1974年生まれ、神奈川県出身。
20歳からイタリア料理の道に入り、24歳でイタリアに渡り、トスカーナ州のフィレンツェを中心に4年半修業。
帰国後は西麻布の『ヴィーノ・デッラ・パーチェ』を経て『ラ・テンダロッサ』の料理長を17年務める。
2020年4月『トラットリア・ダ・ケンゾー』を横浜・馬車道にオープン。