―― Vol.1 ファリナモーレ ――

 2017年7月、「食の都庄内」親善大使奥田政行オーナーシェフが新たに生み出したイタリアンレストラン「ファリナモーレ」。鶴岡駅前にある食のランドマーク「つるおか食文化市場FOODEVER(フーデヴァー)」内にオープンしたそのお店は、温かみのあるウッディなインテリアで多くのファンを出迎えてくれる。

 「ファリナモーレ」とは、イタリア語で“粉”を表す「farina」と、“愛してる”の「amore」の造語だという。そして、パスタメニューは常時20種類ほどを揃える。なるほど、パスタ専門店にふさわしい店名である。
 同店は、鶴岡市にあるイタリアンの名店アル・ケッチァーノの姉妹店で、野菜やお肉といった各種の素材は、地元庄内の契約農家や畜産家から届けられる。庄内産にこだわり、素材の香りと味が生きる調理法は、奥田シェフが“食の魔術師”と呼ばれる所以である。

  

人手不足に対応するためオープンキッチンに。
そして徹底して動線にこだわる。

 ファリナモーレは、オープンキッチンである。奥田シェフにとってはじめてのスタイルだという。

 「オープンキッチンにしたのは、何より人手不足に対応するため。」
 東京の人手不足は深刻。年数が経てばここ鶴岡でも人手不足になると想定し、そうなった時に少人数でもまわせる厨房にしてあるのだそうだ。

こだわりは“動線”だという。
 「厨房カウンターが本丸、その外側の客席が二の丸、隣接するドルチェを含めたさらに外側が三の丸になっていて、それらのすべてが右回り」との奥田シェフの言葉通り、そこにはまったく淀みのない動線が確保されていた。そのため、いざという時には“2人でもまわせる厨房”になっている、という。

 考え方としては、「このお店がお城で、FOODEVERの1Fフロアは城下町」。 ― そう、奥田シェフの視点はファリナモーレだけでなく、自身がプロデュースしたFOODEVERの1Fフロア全体にあるのだ。
 そのため、店舗に隣接する食文化コミュニティスペース(=城下町)で催しを行う場合は、厨房と直結したこちらの小窓から提供が行えるようになっていた。

シンプルでも高い調理能力を誇る
イタリアンキッチン。

 肝心の厨房だが、茹で上げ作業がラクに行える反転式スパゲティ釜2台とガステーブル2台を備えたパスタライン、そして大量調理用にスチコン、ガスレンジ、電気グリドルを備えた焼き物ラインというように、明確に区分してレイアウトしてある。

 奥田シェフ曰く、「この厨房で、催事300人のお客様まで対応できる。最高に忙しい時には、カウンターを前菜の盛り付け台としても利用している。」まさにオープンキッチンのメリットを最大限に活かす考え抜かれた店づくりといえよう。

 もう一つ付け加えるならば、厨房内の通路幅。バドミントンをしていた奥田シェフが軽快なステップを交えながら「イタリアンに最適な寸法」にしてある、と身振り手振りで説明してくれた。


最後に、今回の取材での奥田シェフの言葉を書き記しておきたい。


レストランは生きもの。
使いこなせた時にはじめて命が入る。

  

奥田政行オーナーシェフPROFILE

山形県鶴岡市出身のイタリア料理人。渋谷万葉会館での修行後、鶴岡ワシントンホテルの洋食料理長など歴任。2000年に地元のこだわり食材を使ったイタリア料理店『アル・ケッチァーノ』をオープンする。
2003年から酒田調理師専門学校で3年間講師をつとめ、2004年には山形県庄内支庁より、庄内の食材を全国に広める「食の都庄内」親善大使に任命される。
2006年、テレビ番組『情熱大陸』で紹介され、その後イタリアのスローフード協会国際本部主催の「テッラ・マードレ2006」で、世界の料理人1000人に選出される。(日本からは11人)
2012年にはスイスダボス会議における「Japan Night 2012」において料理責任監修を務めたほか、イタリアローマ法王やダライラマ14世に謁見。
そして2016年、イタリアミラノで開催された世界野菜料理コンテストThe Vegetarian Chanceにアジア代表として出場し、世界各国約1000人から3位に入賞する。
さらに、2017年5月には料理本世界一といわれる「グルマン世界料理本大賞」を受賞、輝かしい経歴を持たれている。

奥田シェフのお店

― アル・ケッチァーノ     山形県鶴岡市
― ファリナモーレ       山形県鶴岡市
― 魚バル           山形県鶴岡市
― ヤマガタ サンダンデロ  東京都中央区銀座
― 地パンGOOD      山形県鶴岡市(姉妹店)
― アル・ケッチァーノコンチェルト  山形県山形市

奥田シェフプロデュース店

― のじまスコーラ  兵庫県淡路市
― ラ・ソラシド  東京都墨田区(東京スカイツリー)
― サーラ ビアンキ アル・ケッチァーノ、
  イル・ケッチァーノ ミエーレ  三重県三重郡菰野町
― オークビレッジ柏の葉  千葉県柏市
― どうなんde's Ocuda Spirits  北海道上磯郡木古内町
― AJIKURA by アル・ケッチァーノ  広島県広島市(広島三越)
― 福ケッチァーノ  福島県郡山市
― イル・レガーレ  山形県南陽市
― 金澤町家ワイナリー  石川県金沢市
― 鎌倉古今  神奈川県鎌倉市
― ホテルアオカ上五島内  長崎県南松浦郡
― イル・フリージオ  東京都港区
― ビワコラージュ  滋賀県長浜市

―― SHOP INFO ――

farinamore

ファリナモーレ

〒997-0015 山形県鶴岡市末広町3番1号マリカ東館1階
Tel.0235-64-0520
・11:00~14:30 (L.O.)
・17:00~21:00 (L.O.)
・不定休

※営業時間や定休日は変動する場合がありますので、公式サイトでご確認ください。

https://www.alchecciano.com/farinamore.html 

つるおか食文化市場 FOODEVER

つるおかしょくぶんかしじょう フーデヴァー

奥田シェフプロデュースの「FOODEVER」1Fフロア。
ここでは魚バル、肉バルが入るフードコートのほか、奥田シェフのプロデュース品やセレクト品が並ぶコーナーもあり、鶴岡市のみならず、広く食文化を発信する施設となっている。

※営業時間や定休日は変動する場合がありますので、公式サイトでご確認ください。

http://foodever.info/